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False Island 49日目 天埜邪鬼(550)と華煉(1516)の邂逅
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「もう一度クラウソラスの名を呼んでください。」

少女の表情は別のモノを見ているようだった。

これはクラウソラスではなかったのか?

拙者に疑心が生まれる。

だが先ほどの力が今までにない感覚であることは確かだ。

今は無心でやるしかない。

「クラウソラス!」

気合いを込めて叫ぶ。

……だが、変化はない。

じっとりと汗ばむのを感じる。

あれだけの思いをしたにも関わらず、技を会得してはいなかったのだろうか……。

焦る気持ちが、行動に出る。

「クラウソラス! クラウソラス!」

しかし、一向に変化はない。

失敗だ……拙者は技を会得できなかった……。

思わず落胆の表情が顔に出る。

仮面を被っていても目から読み取れたのであろう、少女は再び剣を抜く。

「クラウソラス」

少女の剣に炎が点る。

造作なく技を使いこなす少女の姿を見て、自らの不甲斐なさを痛感する。

少女が剣が拙者の刀に触れる。

その瞬間、刀の炎が暴れるように激しく燃えさかる。

その勢いはすさまじく、このままでは刀の炎を制することはできない。

先ほどの感覚を思い出すように、必死で炎を抑えこもうと試みる。

一度できたのだ。2度できぬ道理はない。

拙者は精神を集中させる。

すると激しい炎が少しずつ刀と同化していき……

ついには刀に淡い炎と力のみが残ったのだ。

「その力を憶えておいて。それがクラウソラス。誇り高い炎剣は今貴方を認めました。」

これがクラウソラス!? これが炎の力を封じた神剣!?

拙者は喜びに打ち震えていた。

目標に近づいたからではない。

苦心の末、技を会得できたという、ただそれだけの青臭い思いからだった。




「神満つる剣よ。私に祝福を。ブレス」

少女はそう唱えると、清らかな光に包まれる。

「サンクチュエリ」

今度は少女の身体を包み込むような障壁の力を感じた。

何をするというのだろうか?

「クラウソラスに貴方を認めさせます。クラウソラスの好むものを用意して下さい。」

クラウソラスの好むもの?

「私が教えられるのはここまでです。

私が完全に立ち去る前にクラウソラスの好むものを用意し、

・・・・・・クラウソラスの名を呼び、その力を解き放ちなさい。」

少女はそう言い残し、そのままゆっくりと去って行った。




技が何かを求めるとでも言うのだろうか……? いや、この場合は炎剣のことだろう。

炎剣……つまりは神の炎。

それが望むものと言えば、それは答えは大昔から決まっている。

しかし、今の自分にそのような猛しき心など……


――貴方様には平穏は似合いません。
――どこまでも抗い続けてください。


脳裏に浮かぶ、懐かしき声。

……ああ、そうだった。お前とはそう約束したのだったな。

わかった。俺も覚悟を決める。仮初めの平穏など迷いと共に炎にくれてやろう。

今こそ俺は……お前が示してくれた邪鬼となる!

「永久の祝福!」

身体が優しい光に包まれていく……。

「クラウソラス!」

優しい光は突如として、激しく燃え上がる。

「好きなだけ食うがいい! その代わりに俺に力を貸せ、これからは俺が貴様を飼ってやる!」

炎が一瞬、躊躇したような気がする。

だが、俺には関係ない。

例え相手が誰であろうと、戦って、戦って、戦い抜く!

俺には冥府魔道を進むしかないのだから……。

「うぉぉおおおおおおお…………!!!!」

燃えさかる炎を自らの身体に吸い込んでいく。

全ての炎を吸い込み、カッと目を見開く。

その瞬間、強い波動が身体の中から津波のようにわき起こる。

波動が収まった時、刀には少女が見せた炎剣の力が宿っていた……。
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