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False Island 49日目 天埜邪鬼(550)と華煉(1516)の邂逅
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「ご心配なさるな。妖しい者ではありませぬ」

未だ気配すら掴ませぬ妖しい者が声をかけてくる。

声のした方向を振り返って驚く。

近い。

こんなに近くに来るまで気づかなかったなんて。

おまけに・・・・・この男には先ほど放ったクラウソラスの炎の残滓がまとわりついている。

クラウソラスが発動していた?その気配すら私には感じ取れなかったというのに?

仮面を被り、自らを秘する・・・・容易ならざるもの。

私は不安をかき消すかのように仮面の男に剣を向ける。

「誰なの。貴方……?」

自分でも声がこわばっているのがわかる。

「拙者、天埜邪鬼と申します。貴殿が先ほど使った技に少々興味がありまして参上しました」

あまのじゃきと名乗るこの男はどうやら先ほど揮ったクラウソラスに興味を持ったらしい。

ぬけぬけと・・・私に技を教えて欲しいなどと。・・・・よりにもよってあの技を。

 

クラウソラス。

私は知っている。・・・・マナがこの技を得るためにどれほどの犠牲を払ったか。

あの日、マナは自分の体の一部を引き裂く思いをして、装備に新たな息吹を吹き込む術を身につけた。

そして、その同じ日に・・・マナは彼女たちに見つかり・・・そして狩られた。

私はあの日のことを忘れたことなどない。

狩られ、荷物の一部を奪われたマナの体を燃やしつくし、魂を封じ・・・・・

この男に何がわかる?

私とマナが払ったあまりにも大きすぎる代償をこの男は知っているとでもいうのか?

闇の翼の皆も、マナが封じられ私に変わることで、腕の良い剣士を失くした。

皆にどれほどの迷惑をかけたことか。

目が熱くなる。体も熱くなる。

私は目の前の男を本気で消し炭に変えてしまいたいと思い、そして・・・その思いを必死で抑えこんだ。

そんなことをしてもあの日に戻れるわけではないのだから。

 

私は力なく剣を下ろした。これ以上剣に力を込めて何になる?

「お断りします。見ず知らずの方に、この技を教えるなんて・・・・私にはできません」

立ち去って欲しい。私を一人にして欲しい。

泣きたかった。マナのいないところで思いっきり泣きたかった。

一人にして欲しかった・・・・

 

なのに・・目の前には何度も何度も地面に頭を擦り付ける男が一人。

私が怒っているとでも思ったのだろうか?男はひたすら請い願う。

私はただ一人になりたかっただけなのに。

 

そのうち、ふと目の前の男に興味がわいた。

この男・・・ひたすら請い願うのに・・・この技を憶えたい理由を一言も口にしない。

普通、力を追い求めるものは何かを成し遂げたいと願う者。

だが、ごくごくまれに成し遂げたいことは何も無いのに、力を強く望む者がいる。

目的なく力を求める者は、ひたすら「己」を欲する者。

砂漠を彷徨い、一滴の水を捜し求めるかのように、必死で己を探求する者。

己の限界を見定め、それでもまだ足りず、永遠の飢えと闘うかのように探求する者がいる。

この男は、何をこれほど望んでいるのだろう?

ただひたすらに技を求め、力を求めた先に、この男は何を得ると言うのだろうか?

 

「いいでしょう。クラウソラスを貴方に教えます。」

男は顔を上げると信じられぬという顔をしていた。

「ただし条件が二つだけあります。」

この技を得るために多くを失うと共に、仲間にも多くの迷惑をかけてしまった。

だから、私の仲間が望む物を何か一つ譲っていただくこと。それが第一の条件だった。

そして、もう一つ。

「私の名を訊かないこと。これが条件です。」

 


クラウソラス

それは神の武器。炎剣の名前。

人によって力の引き出し方は違うのかもしれないけど、霊剣の力をこの地に顕現させることに変わりはない。

「私の場合、クラウソラスの火の力を剣に一度宿らせます。それから剣を薙ぐことで力を顕現します。

ゆっくりと火の力を呼び出しますので見ていてください。」

目を瞑って名を呼ぶ。 クラウソラス・・・・クラウソラス・・・・

何度も名を呼ぶことで炎剣の力が崩界に宿る。

私はゆっくりと目を開ける。

手にした崩界がゆらりとした焔を纏っているのがわかる。

「見えますか?この焔が。」

見えてもらわなければ困る。

この男は、「その剣に炎を点した技」と言った。

見えるはずだ。見えていなくとも感じているはずだ。

「武具に力を付加する能力者であれば、炎剣の力を宿らせる武器は何でもよいはずです。

ですが、貴方にはその素養が見られません。

いきなり杖や短刀に炎剣の力を保持するのは難しいでしょうから、最初は剣を使われるのがよいでしょう。

剣を抜いて下さい。私が呼んだクラウソラスの力を貴方の剣に移し変えます。」

錫杖を手にした仮面の男は杖以外に短剣と剣まで持っていたのは好都合だった。

そうでなければ崩界を手渡さなければならなかっただろう。

男の抜いた剣先に崩界の剣先をそっと触れさせる。

あとは力を移し変えるだけ。

だが、炎剣の力は男の剣に移るとそのまま虚空へと消えていった。

「炎を拒否しないで。受け入れて。」

最初は炎剣の力を剣の上に保持するところから。

次いで、自らの力で炎剣の力を呼び出せるようにならなければならない。

さらに炎剣の力を自らの力へと変え、外へと揮わなければならない。

おまけにこの男の場合、杖の上にも炎剣の力を呼び出せるようにならないといけないのだ。

最初の段階でこれでは困る。

確かに普通の者は炎から逃れようとするだろう。だが、炎から逃れる者にこの技は会得できない。

素養のない者に技を教えるには、まず炎に慣れてもらわなければならないようだ。

私は剣を鞘に収め、男にも剣を鞘に収めさせ、

「エターナルフレイム」

炎の力を呼び、微笑みながら、正面に立つと男の両頬をそっと両手で包んだ。

途端に仮面の男は炎に包まれた。

とっさに逃れようとする男を静かに一喝する。

「この程度の炎に耐えられないのなら、修得することはあきらめなさい。」

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